2016年10月2日日曜日

【ネタバレ有】オーガスト超大作「千の刃濤、桃花染の皇姫」クリアと感想!~忠義と愛、そして政体と国防の物語

先週の金曜日に美少女ゲームブランド・オーガストの超大作「千の刃濤、桃花染の皇姫」がついに発売になりました!!
今回は事前情報からゲーム内容に超超超期待していたので、情報が載っている電撃G’sマガジンのバックナンバー(電子書籍ですが)を購入したり、ビッグサイトの体験版配布イベントに足を伸ばしたり、予約開始と同時にソフマップでプレミアムパックを予約したり、ゲームの発売でここまで期待したのは22年前のファイナルファンタジー6以来ですね。



激アツな世界観!

さてこのゲームの何がワクワクするかと言えば、一番は世界観でしょう。
自動車・高層建築やタブレットPCなど現代的な科学技術が発展している一方で、侵略国家であるオルブライト共和国の【帝国主義】や物語の舞台である皇国の【君主政治】など19世紀を思わせる社会体制が続いているのが面白い。

そして侵略国の【共和国】と非侵略国である【皇国】は政治体制や国防兵器で真逆のアプローチを取っており、兵器も共和国の兵士が【銃】など科学兵器を使うのに対し、皇国の武人は【呪装刀】など呪術に由来する兵器を利用します。この銃と呪装刀が対峙する構図が最高に燃える所です。

あと、皇国の大和文化をベースに古代中国を合わせたような独特の文化が美しい。
→ 例えば日本をイメージする花は桜だが皇国は桃であったり、日本は君主が天皇だが皇国は皇帝で○○帝と呼ぶなど。
→ 日本に似ているのに少し違う文化が異世界であることを認識させ心地良いんです。
歴史を感じさせる帝宮も大正浪漫を思わせるビル街も全てが美麗!


(ここから下はネタバレあり)

私が千桃に期待していたもの~社会体制と国防体制をテーマとした国造りの物語

千桃のイントロダクションは初代皇帝から2000年続いてきた皇国が共和国の軍事力で侵略され亡国の危機に陥った所から始まるわけですが、私が予想していたのは単に共和国の占領から皇国を独立させて元の体制に戻ってめでたしめでたし…ではないだろうな、という点です。なぜなら経済のために植民地を作って利益を得ようとする共和国も問題ですが、皇国は皇国で手放しに賞賛してよい社会なのか疑問が残るからです。具体的には以下の点ですが。
  1. 皇帝が独占して政治を行う専制政治
  2. 巫女の命を消費して奇跡を起こす呪術への依存
  3. 呪装刀を扱える「武人」は血筋による特権階級

千桃は「大御神」に代わって国を治めてきた皇帝一族の末裔である宮国朱璃に対し、「神の力」で国を守る皇帝・呪術・武人といったシステムが本当に皇国民に幸福と平和をもたらすのか、その答えを求める物語ではないかと私は予想しました。例えば【民主政治】と【銃】による防衛を導入すれば巫女の命を徒に縮めることもなく、武人の特権階級もない平等で平和な社会が実現できますからね。【銃】と【呪装刀】が戦う構図は中二病に見えますが、誰でも平等に力を発揮できる物質兵器と血筋や命を対価とするオカルト兵器はどちらが幸福で平和な社会を作るのか?というテーマに帰着させれば政治社会ものとしても非常に面白い。


さてここからはプレイした結果です(当然ネタバレ注意)


宮国朱璃(というかオーガスト)の答えはどうでしょうか。
「皇国を平和で幸福な国に導いてくれるなら、帝位には拘らない」
奏海・エルザ・古杜音ENDでは(偽皇帝である)翡翠帝を国家の象徴としながらも、共和国を手本として議会制の民主政治を導入する結末でした。朱璃は大統領や議員に立候補するなど、皇帝とは別の道で皇国の幸福に寄与していくと。2000年続いた皇家の血が実は途切れるのはやや寂しいですが、しがらみを捨てて新しい制度と皇家で再出発するのはまあ綺麗なENDかなと思います。また、エルザENDでは銃と呪術を合わせた呪装兵器で共和国の侵略から守ろうという国防の方針も示唆されました。

対して、グランドENDである朱璃ENDは桃花帝こと宮国朱璃が真の皇帝として返り咲き、これからも皇帝一族が国を治めていく旧態依然の国家に戻る結末でした。(恐らく滸ENDも同じでしょう)
これ、私は納得できないなあ…。別に帝政が悪というわけではなくて、皇国の未来を国民の手で選ぶ物語が見たかった。(たしか作中でもエルザが奏海に国民投票で皇帝制度を廃止するか決めると示唆するシーンがあったと思います)

具体的には次の3点を最後に国民投票で決め、それがゲーム中の選択肢によって結果が変化する構成だったら面白かったのになぁ、と非常に惜しく思っています。
  1. 皇家を存続させるか、廃止するか
  2. 残すなら、皇帝に政治権力を認めるか
  3. 国を武人や呪術という「神の力」で守るか、それとも銃という「人の力」で守るか
そもそも皇国は先進的な科学技術を持ちながらも、皇帝一族による防衛政策の失敗により科学兵器に投資せず共和国による侵略される結果を導いたわけですし、国民としては皇家を残すのは賛成するでしょうが、政治権力まで無条件で認めるかなぁ?武人はもっと深刻で、三年前の戦争からレジスタンス活動で生存者は数十人?しかいないわけで、一国の防衛はままならないでしょう。しかも特権階級で俸給を貰う立場でありながらも一度は国を守れず国民から非難を受けているわけですし、現実世界の中立国家スイスのように国民が皆で銃を持って国を守る道も欲しかったですね。ちなみに皇国も武装中立国家です。皇国を2000年治めてきた皇家の末裔たる朱璃が国民の幸福のために帝政の廃止と民主政への移行を否定しなかったように、滸も国を守るために武人の力や呪装刀と決別し銃を選ぶ道も見たかった。もっともグランドENDでは皇国に災いをもたらす「禍魄」を封印したので諸外国による侵略戦争はもう起きない平和な世界になったという建前なんでしょうけど。

世界観もキャラもCGも音楽も素晴らしいが…終盤のファンタジー展開に不満あり

物語に壮大さを出そうとしたのでしょうが、終盤に登場する「ミツルギ」「根の国」「緋彌之命の転生」「禍魄」「黒主大神」といった要素がファンタジー色を強めすぎて逆にチープさに繋がっていたように思います。
例えばエルザを代表するセリフに「私は共和国の侵略戦争を認めない」というのがありますが
→ 実は共和国は「禍魄」が皇国に災いをもたらすためだけに育てた国であり、彼を封印して共和国は侵略戦争を止め世界に平和が訪れました…
これでは人間同士の争いに何の哲学もないじゃないですか。千桃はあくまで共和国と皇国の、人間社会のぶつかり合い、呪術という少し不思議な力を持った国の政治社会ドラマに徹して欲しかった。現実の世界史で言うなら産業革命後の大英帝国がお金儲けのために植民地を作ったけど被占領国の人間が民族自決のために立ち上がって祖国解放を目指すと、そういう人間社会のお話が見たかった。その点では呪装兵器を使って世界中で戦争をコントロールし利益を得ようとするウォーレン総督の方がまだポリシーがあって良かったです。
あと、初代皇帝である緋彌之命編を入れるのは良いとしても、転生といった手段で現代に現出するのではなく、君主としての心構えや理念を時代を超えたメッセージとして現代の朱璃に伝えて突き動かすという形で描いて欲しかったです。
その点、前々作の【穢翼のユースティア】は超自然パワーは存在するものの、ノーヴァスアイテルに住む人々と国の政治社会ドラマとして完結してましたね。


キャラごとの感想はこちら


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